犬のしつけコラム第8回【前編】首輪と鑑札、24時間の守り ――あの日、福島で千切れた絆を繋ぎ直すために
EPISODE 08 : PART 1
【3行で解説!】
福島の禁止区域で、9ヶ月生き抜いた「なつ」
1. 2011年、無人の町でたったひとりサバイバルしていた犬がいました。
2. 救出された後、立ちはだかった壁。それは「飼い主へと続く道」がどこにもないこと。
3. 首輪はあっても、情報はゼロ。16歳になった今も、彼の本当の名前を私は知りません。

(当時のなっちゃん)
🐕🦺私の隣で穏やかに昼寝をしている愛犬、ひゅうがなつ(通称なつ)。彼は2011年12月, 福島県浪江町の立ち入り禁止区域内で保護された男の子です。
東日本大震災、誠にそして原発事故。誰もいなくなった町で、彼はたったひとり、9ヶ月もの間サバイバルしていました。
当時東京都動物救援センターにボランティアとして参加していた私は、現場の凄絶な話を耳にしました。痩せ細った体で、繋がれたまま生き延びた子。人の姿を見て、安堵したように息を引き取った子。
そんな極限状態から命を救い出した後、救い出せたと安堵する間もなく次の大きな課題が目の前に立ちはだかりました。
🛣️ 飼い主へと続く道が、どこにもない
救出された犬たちの多くが、飼い主さんと再会できないか再会できるまでに非常に長い時間を要しました。本来の飼い主さんが見つかる前に虹の橋を渡ってしまった子もいました。
理由はシンプルです。首輪をしていなかったから。首輪はあっても、鑑札や迷子札がついていなかったから。
なつもそうでした。首輪はしていましたが、そこに彼が「誰の家族か」を示す情報は何もありませんでした。
彼は先日、16歳の誕生日を迎えました。
私の大切な家族ですが、元の飼い主さんと再会させてあげられる道は、あの日からずっと閉ざされたままです。「もし飼い主さんが現れたら元の飼い主さんにお返しする」という契約を交わして家族に迎えましたが、16歳になった今も彼の「本当の名前」すら、私は知らないのです。
後編へ続きます